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「大丈夫?」
広げられたBDの手の平で座り込む私に少年が一言。
機体の肩に立っている彼は、昨日 噴水広場で出会った少年だった。
「うん! あっ、私のこと覚えてる?」
「・・君は・・だれ?」
その言葉を聞き私は肩からがっくしと崩れ落ちた。
(覚えてないんだ・・・)
なんというか虚しくて切ない。
昨日の今日な訳だから覚えていても良さそうなのに・・
自分自身の魅力のなさを考えさせられてしまう。
「あ――っ!?」
ふと俯いた先に見たのは、なれ果てた私の原付きバイク。
「よいしょっと・・ねえ、君」
肩から滑り降りて来た彼は、俯き落ち込む私の手を握り、半ば強引に立たすと。
「セルフォン持ってる?」
そう私に聞いてきた。
「持ってるよ」
「じゃあさ、これ収納してよ」
「え、いいけど転送ロックは?」
このバーチャル世界 シエスタ内では物を持ち運びする際にセルフォンから放たれる『赤外線レーザー』を物に当てると、データとして収納が出来る。
自分の所有物には『転送ロック』を掛けておかないと、第三者に盗られたりするのだ。
「掛かってないから大丈夫」
それならと私はセルフォンを取出し、白銀の機体とボードに赤外線レーザーを当て収納してあげた。
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