第1話 スケーティングアワー

2/25
前へ
/65ページ
次へ
  ――この世の中は腐っている。 「はいはいっ! 只今お持ちしまーす!!」 鮮やかに彩る町並みの遥か上。 「お待たせしました。ビール二丁おまち!」 建ち並ぶビルディングの屋上にあるビアガーデンで、私は働いている。 「・・きゃっ!?」 「げえへへへ」 時にこうして酔たくれた客に スカートをめくられる事も しばしば・・ だけどこんな事で 私はめげたりはしない。 「リリアちゃーん、時間だからもうあがってもいいよ」 「お疲れ様です 店長」 颯爽とカウンターの奥にある 更衣室へ駆け込み、 私は私服に着替えた。 ちなみに『リリア』というのは この『バーチャル世界』で 呼ばれている 私のハンドルネーム。 本名は朽木桜(くちき さくら) なんというか 縁起の悪い名前。 “春咲く桜が朽ちた木になる” なーんて私の青春が 散っていくような そんな名前だ。 「リリアちゃん。今月の給料は、どう振り分ける?」 「リアと電子マネーに半分ずつで・・じゃあ、お疲れ様でーす!」 今や世界中で 半数を超える人達が この『実体験型バーチャルゲーム:セルフォン』を利用している。 私もその中の一人。 何故このゲームが 人気なのかというと、 現実世界・・つまり 『リアル』と変わらない 世界観であるということ。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加