1*月夜の使者

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「泣いてるの?」 「……、っえ?」 柚稀がカナトに出会ったのは、怖いくらいに月が輝く深夜のネットカフェだった。 そこのネットカフェでアルバイトをしていた柚稀はその日、いつものように仕事を終えて裏口から出てきた。 このアルバイトを始めてから一ヶ月…… 始めた理由は、なんと言っても自分の不注意が招いたものだった。 普段から不注意が悪いところだと親からもよく言われていたのに。 アルバイトを探していた柚稀は、時給と仕事内容しか見ていなかった。 その場所は、根は真面目な学生、柚稀とはまず無関係であろう場所だったから。 ここは夜になると動き出す歓楽街の外れ。 それでも、与えられた仕事はやりこなせ。 それが柚稀の父親からの教え。 ようやくこの仕事にも慣れてきた頃。 裏口の石段に座って一息ついていた時だった。 声を掛けられて顔を挙げると、いつの間にか目の前に1人の青年が立っていた。 「下向いてるから、泣いてるのかと思った」 怖いくらい綺麗に輝く月の真下。 中性的で、端正な顔立ちに、小柄な身長。 それが、カナトだった。
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