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三人の帰り道は人通りが少なく、家もほとんど建っていない。道は補装されておらず、土が剥き出しになっている。両脇には、まだ何も植えられていない畑が茶色を晒していた。
「アオ、実テの結果返ってきただろ?」
「うん」
男――赤坂 秀(アカサカ シュウ)が、隣を行く天井を見下ろしながら言った。その顔は嬉々として、頬が緩んでいる。
「どうだった?」
「その話題をアオに振ると自滅するって事いい加減学習すれば?」
天井が応える前に女――緑川 詩帆(ミドリカワ シホ)が呆れたように言う。事実、赤坂も緑川も、これまで全てのテストで天井に惨敗していた。
赤坂と緑川が睨み合う。間に挟まれている天井としては、この険悪な雰囲気をどうにかしたかった。
「テストなんてどうでもいいじゃないか」
「どうでもいい……」
「どうでもって……」
はぁ、とため息をつき少し落ち込む二人。そんな二人の様子に天井は気付かず、話を続ける。
「そんなことより
――暇潰しに付き合ってくれないか。
天井は背筋に悪寒が走ったように身震いした。鼓動が早鐘を打ち始めたのを感じる。
「二人とも、今の声、聞こえた?」
立ち止まり、両側の二人に声をかけた。二人はひきつった顔で首肯する。
辺りに人はいない。あの声は間違い無く俺達にかけられた声だ、と天井は推測する。
目もくれずに走り出せば、まだ背後の存在と関わらなくて済むのだろうか。天井はその存在から、悪い運命と、威圧にも似た力の気配を強く感じた。
逃げよう。天井はそう思い、
「天、使?」
「……うそだろ」
先に振り返っていた緑川と赤坂が、放心したように言った。
すぐに天井も振り返り、驚いたように目を見開く。
「天使……か」
中性的で端正な顔立ちが、華奢な体格が、背中越しに見える赤みがかった白い六本の翼が、頭上に浮遊する金色の輪が、威圧にも似た力の気配が。
天使、という非現実の存在がそこにある事を、証明していた。
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