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「ああそうだ、もう時間がない」
天使はたいしたことではないといった様子で言った。
身体の全てが半透明な中、頭上の輪だけが輝きを放ち続けていた。
「分かれろ」
天使がそう言うと、金色の輪が三つに分かれ、それぞれが白い光の球となった。ビー玉ぐらいの大きさの物が二つ、それより一回り大きい物が一つ。それぞれがつかず離れずの距離を保ち、その場を漂っている。
「君達に力を与える。何も説明できなかったけど、とにかく……行ってくれ」
天使がそう言うと、光の球が三人の額に勢いよく突っ込んだ。
三人が絶叫する。緑川が痛い、痛いと甲高い声をあげ、やがて事切れたように全く動かなくなる。天井は何かに脳を貫かれているような激痛の中、意識を保ち、目を開く。
先程よりさらに薄くなっている天使は、泣いているように、天井は感じた。
「対象の組成を解析、データを保存。その後対象の組成を一時的に第五世界の物に変更。第六世界の力を利用し、第五世界まで誘導しろ」
天使が淀みなく言い放つと、天井の視界が一気に真っ白になる。痛みが増し、堪えていた意識はついに消えた。
「頼む……」
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