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道なりに進むにつれて、あの騒音が大きくなっていく。天井は引き返そうかとも思ったが、他に道はないし、道なき道に入って迷うのはごめんだったのでそのまま進む事にした。
徐々に木が絶ち消えていき、視界が開ける。
まず彼の目に飛び込んだのは、緑の海と言っても良さそうな、青々として腰の高さまでありそうな草原。それが視界のほとんどを占めている。
そして赤い鎧と黒い鎧を身につけ、倒れている人々。流れている赤い液体。草はところどころ、赤黒く染まっているのがわかる。
遠く離れた辺りでは、槍と剣で切り合う二人の人間が見える。
何これ? ゲームの世界みたいだ。
妙な音がした後一人が倒れ、赤い飛沫が散る。
天井はそれを見つめた後、草の赤黒い部分、液体の染み込んだ地面を触った。
指が、赤くなった。
「うそだろ……」
そう呟き、天井は放心してしまったように指先をじっと見つめていた。
見つめていれば消えるとでも、全て夢だったと誰かが告げてくれるとでも言うかのように。
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