春雷

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思えばあの時からだったかもしれない。 雷が鳴っていた春の夜。 俺は雷が大嫌いだった。 その夜も怖くて毛布にくるまって震えていた。 もう怖がる年でもないから見られるのは恥ずかしかった。だからひとりで戦うしかない。 ピカッ 辺り一帯が明るくなる程の稲妻。 一段と覚悟をする。 その瞬間毛布をめくられた。 「誰…っ!?」 ドーン!! 「……っ!」 反射的に毛布をめくった人物に抱きついてしまった。 この匂い…光一だ! 「やっぱり雷怖いんやんか」 「や、やっぱりってなんやっ!!」 雷に震えるところを見られた上に抱きついてしまい、恥ずかしくてばっと光一から離れた。 「前から雷鳴ってるとき、自分震えてんねんで?俺いつもお前のこと見とるもん」 こんな台詞をまっすぐ見つめて言ってくるもんだから、不覚にもどきっとしてしまった。 「何を言うてんねんっ」 そう言って光一に背を向けた途端、また外が明るくなる。 反射的に肩がびくんと跳ねてしまった。 「しゃあないなぁ。俺が手ぇ握っといたるよ」 ぎゅっと左手を握られた。 「い、いらんわ!」 その途端轟音が響く。 「――っ」 思わず、握られた光一の手を強く握り返してしまった。 「つよがらんでもええから」 と、優しく笑って、より一層強く握られる。 その優しさと強さに、小さな声でありがとうとしか言えなかった。 必要以上にドキドキして、嬉しいような照れるような不思議な感覚だった。 俺らはそのまま手を繋いで眠った。繋いだその手はいつも以上に熱い気がした。 春雷が鳴り響く夜、俺は光一に恋をした。
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