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黙った空気が重くて、俺は光一に話し掛けた。
「なんで来たん?」
コーヒーを出しつつ聞いてみた。
「………会いたくなってん」
「…は?」
わけが分からず、聞き返してしまった。
「だから、会いたくなってん」
「会いたいってなんやねん…」
急に心臓が早鐘のように鳴りだした。
「雷が鳴ってるから…。剛、雷嫌いやろ?だから、会わなあかんと思った…」
光一は………あんな昔のことを覚えているの…?
普段は忘れっぽいくせに。
いつだってそうや。
自分のことは忘れても俺のことは忘れへん。
こんなのただの光一の気まぐれ。
あほ、期待なんかすんなよ、俺。
光一もあほや……
期待させんといて…
「うっ…うぅ……く…っ」
「剛?な、なんで泣くん?」
「なっ、なんで…きたん?やめてや…ほっといて……」
光一は優しいから苦しい。
今までの想いが涙と一緒に溢れ出した。
「ほっとけるわけないやろ…」
「どうして…っ?」
「………俺、剛が好きなんや」
「え…」
「相方としてとかじゃなく好きなんや。ずっと前から…」
「……」
身体が、口が動かない。
頭のてっぺんからつま先まで痺れたみたいや。
「ごめん…気持ち悪いよな…。俺、帰るわ。ほんまごめん…」
光一が大股で玄関に向かう。
光一が帰ってしまう…!
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