春雷

6/7
前へ
/82ページ
次へ
俺の身体がようやく動いた。 何かに弾かれたみたいに光一の背中を追う。 「いやや…!行かんで…っ。気持ち悪くなんかない…、からっ。ぼ、俺も光一が好きなんや……ッ」 思わず背中に抱き着いた。勢いがつきすぎて、ふたりとも床に倒れた。 「つ、剛…?」 「光一が俺のこと好きやなんて、信じられんくて…ッ。何も言えんかった…ご…ごめん……!」 「嘘やん…」 「嘘やない…僕もずっと好きやったよ……」 そう言った途端に正面から抱きしめられた。 暖かくて、光一の匂いがした。 しばらくして身体がゆっくりと離れる。 視線が絡み合って目が離せない。 すると、光一の手が俺の頬に触れた。次は唇をゆっくりなぞる。そして、顎を軽くつかまれた。 光一の綺麗な顔が近づいてきて、少し恥ずかしくて目をつぶった。すぐに唇が触れた。ほんの触れるだけだった。一瞬目が合うと、次は深い、甘いキスをした。 「ん…ッ、ふ…ぁ……はあっ…」 唇と唇の間から息が漏れる。 息が苦しくなって、唇が離れた。 「剛…えろい…」 「んな…っ、光一があんなキスするから……!?」 いきなり手で口を塞がれた。 「寝室、行こ?」 「……!!!?」 「俺が連れてったる」 はいなんて言ってないのに、いわゆるお姫様抱っこで寝室に連れていかれた。 「行くなんて、言うてない」 こんなことを言ってみたけど、これから起こることを思うと、期待で胸が高鳴った。 「したくない?」 こういうことを聞く光一は本当にずるい。 「そんなわけ…ない…」そう言った途端に押し倒された。 また俺らは手を繋いだ。絡んだ手は熱くて、あの時とは比べ物にはならなかった。 春雷はいつの間にか遠くで鳴っていて、だけど、その響きは激しく、それでいて甘いものだった。 あとがき→  
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

420人が本棚に入れています
本棚に追加