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俺の身体がようやく動いた。
何かに弾かれたみたいに光一の背中を追う。
「いやや…!行かんで…っ。気持ち悪くなんかない…、からっ。ぼ、俺も光一が好きなんや……ッ」
思わず背中に抱き着いた。勢いがつきすぎて、ふたりとも床に倒れた。
「つ、剛…?」
「光一が俺のこと好きやなんて、信じられんくて…ッ。何も言えんかった…ご…ごめん……!」
「嘘やん…」
「嘘やない…僕もずっと好きやったよ……」
そう言った途端に正面から抱きしめられた。
暖かくて、光一の匂いがした。
しばらくして身体がゆっくりと離れる。
視線が絡み合って目が離せない。
すると、光一の手が俺の頬に触れた。次は唇をゆっくりなぞる。そして、顎を軽くつかまれた。
光一の綺麗な顔が近づいてきて、少し恥ずかしくて目をつぶった。すぐに唇が触れた。ほんの触れるだけだった。一瞬目が合うと、次は深い、甘いキスをした。
「ん…ッ、ふ…ぁ……はあっ…」
唇と唇の間から息が漏れる。
息が苦しくなって、唇が離れた。
「剛…えろい…」
「んな…っ、光一があんなキスするから……!?」
いきなり手で口を塞がれた。
「寝室、行こ?」
「……!!!?」
「俺が連れてったる」
はいなんて言ってないのに、いわゆるお姫様抱っこで寝室に連れていかれた。
「行くなんて、言うてない」
こんなことを言ってみたけど、これから起こることを思うと、期待で胸が高鳴った。
「したくない?」
こういうことを聞く光一は本当にずるい。
「そんなわけ…ない…」そう言った途端に押し倒された。
また俺らは手を繋いだ。絡んだ手は熱くて、あの時とは比べ物にはならなかった。
春雷はいつの間にか遠くで鳴っていて、だけど、その響きは激しく、それでいて甘いものだった。
あとがき→
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