越えていくバイオレットライン(前編)

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  カタンッ 「あっ…!?」 俺の右手がワインの入ったコップを倒した。 ワインが零れてカーペットに赤黒い染みを作る。 急にテレビの中の笑い声が頭に響き、部屋の温度が一気に下がる。 俺も剛も一瞬呆然として、はっとした。 なんてことをしてしまったんだ。 まずい。どうしよう。 言葉が出ない。 「、あ…つ、剛、俺…」 「あ、の、ごめ…っ!帰るな、俺帰るっ…こういち、ごめん…っ」 剛はバッグだけを引っつかんで、部屋を飛び出した。 終わった。すべてが終わった。 もう決して戻れない。 その後、カーペットをタオルで拭いたが、ワインの染みはほとんど落ちなかった。 俺の家のリビングにはワインの染みと、始まりと同じネックレスだけが残された。 君の痕跡が、残る 続
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