越えていくバイオレットライン(後編)

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幸か不幸か、次に俺が光一に会ったのはそれから二週間も経ってからだった。 一人で雑誌撮影の仕事の後、ふたりでのラジオの収録だった。 ラジオ収録は番組の収録と違って楽屋が別だからいい。 でも、ラジオはどんな番組よりも素だからな… 話さないわけにもいかないし、それどころかぎこちないわけにもいかない。 でも、今まで通りに話すなんて到底無理かもしれない。 頑張って、無理して、笑うしか。 こんな逃げてばかりいてはいけないのはわかっているけれど、とても堪えられない。 前ようなふたりに戻りたい。 やっぱりあまりにも多くのことを望んだから罰が当たったのだ。 あんなにも優しく強く美しい人間がただ隣にいてくれるだけで、俺は十分すぎるほど幸せなのに。 愛されたいなんて、おこがましい。 そう、おこがましい。 はずなのに。 俺は光一を愛してる。光一に愛されたい。 自分で自分が嫌になる。 こんな気持ち消えちゃえよ。 いっそ大嫌いになってしまいたい。 「剛さん、スタンバイお願いしまーす」 一人で思いに沈んでいるうちに時間になったようだ。 一生懸命、笑わなくちゃ。 今まで腐るほど顔を突き合わせてきたのに、今日ほど光一の顔を見るのに覚悟がいったことはなかった。  
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