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光一は何も言わない俺をじっと見て壊れそうに笑った。
「…俺、ずっと昔から剛のことすきやねん」
突然だった。
いや、きっと突然ではないのだ。
光一は今日俺を呼んで言うつもりだったのだろう。
それは俺がずっとずっと聞きたかった言葉であり、聞いてはいけない言葉だった。
「こ、光一……俺」
「お前は何も言わんでええ。勝手に俺がすきなだけで剛は悪いことないんや。今までの全部は俺がしたこと。ええな?」
いやだ。まるですべて光一が悪いみたいなそんな言い方。
"わるい"ことをしたのは、望んだのは、俺もなのに。
何故そこで俺を庇うんだよ。
「せやからお前はもうここに来ちゃあかんねん。戻ろう。前に戻ろう」
聞きたくない。それ以上聞いたら本当に前のように戻ってしまう。せっかく安心できる場所を見つけたのに。失うの?
「俺たちはKinKi Kidsや。俺の相方は剛で、剛の相方は俺。それ以上でもそれ以下でもない」
やめて。俺を突き放さないで。夢で見た光一が走り去る背中とこの言葉がだぶる。
俺はいやいやするようにかぶりを振った。
光一はそれを見て自嘲するような口調で言った。
「大丈夫や。もし今度楽屋とか一緒になっても、あんなことしないから」
"あんなこと"とはキスのことだろう。
それを言った光一は痛いほどに切ない眼をしていた。
いつもいつもその眼で俺を見ていた。
その眼が悲しくて俺の眼から涙が溢れ出た。
光一は驚いて絶対しない、約束する、大丈夫と言った。
「…っ、ちゃう…」
「え、ちゃうって何が?」
次から次へ涙が零れて拭うのも面倒だった。
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