越えていくバイオレットライン(後編)

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  光一は何も言わない俺をじっと見て壊れそうに笑った。 「…俺、ずっと昔から剛のことすきやねん」 突然だった。 いや、きっと突然ではないのだ。 光一は今日俺を呼んで言うつもりだったのだろう。 それは俺がずっとずっと聞きたかった言葉であり、聞いてはいけない言葉だった。 「こ、光一……俺」 「お前は何も言わんでええ。勝手に俺がすきなだけで剛は悪いことないんや。今までの全部は俺がしたこと。ええな?」 いやだ。まるですべて光一が悪いみたいなそんな言い方。 "わるい"ことをしたのは、望んだのは、俺もなのに。 何故そこで俺を庇うんだよ。 「せやからお前はもうここに来ちゃあかんねん。戻ろう。前に戻ろう」 聞きたくない。それ以上聞いたら本当に前のように戻ってしまう。せっかく安心できる場所を見つけたのに。失うの? 「俺たちはKinKi Kidsや。俺の相方は剛で、剛の相方は俺。それ以上でもそれ以下でもない」 やめて。俺を突き放さないで。夢で見た光一が走り去る背中とこの言葉がだぶる。 俺はいやいやするようにかぶりを振った。 光一はそれを見て自嘲するような口調で言った。 「大丈夫や。もし今度楽屋とか一緒になっても、あんなことしないから」 "あんなこと"とはキスのことだろう。 それを言った光一は痛いほどに切ない眼をしていた。 いつもいつもその眼で俺を見ていた。 その眼が悲しくて俺の眼から涙が溢れ出た。 光一は驚いて絶対しない、約束する、大丈夫と言った。 「…っ、ちゃう…」 「え、ちゃうって何が?」 次から次へ涙が零れて拭うのも面倒だった。  
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