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一桁までしか羊を数えられない、眠れない娘がお母さんに言います。
「ねぇ、お話してよ」
お母さんは答えます。
「いいわ。その代わりちゃんと寝るのよガール」
静かな口調でお母さんは話し始めました。
「あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、
「お母さんしばかりって何?そんなに「死」ばかりがあふれているところなの?」
「違うのよ。おじいさんはまだ死んだりしない。まだ今すぐにはね。でも保険金のことは心配しないで。アフラックに任せて。大丈夫だから。
芝刈りっていうのはね、簡単に言えば、ペナルティのワッキーよ」
「ワッキー、ね。わかった」
物わかりのいい娘の笑顔。
お母さんは続けます。
「おばあさんは川へ洗濯に、
「お母さん」
「うん?」
「おばあさんの家に洗濯機はなかったの?」
「そうね、なかったわ」
「じゃあ、おばあさんの家は四畳半で、もやしが主食の貧乏だったのね?」
「そうかもしれないわね」
ウフフ、とお母さん。
「そんな、洗濯機がないなんて、あたし青天の霹靂」
「そうかもしれないわね」
ははッ、とお母さんの愛想笑い。
きっと青天の霹靂の意味が分からないのでしょう。
「それじゃあ、おばあさんはアタックを持って川に洗濯をしに行ったの?」
「そういうことになるわね」
「そんなのダメだよッ!川が汚れちゃう!カッパのアツシ君が死んじゃう。頭の皿が、すすいだ瞬間キュキュッとなっちゃう!」
「大丈夫よ。アタックは元の白さに戻すだけ。キュキュッとはならないわ。安心して。ただアツシ君の頭の皿にこびりついたカレーの跡が消えるだけ。たったそれだけのことよ。」
「お母さんはわかってないの!
あのクッキリとあざやかに浮かび上がるカレーの跡を作る為に、アツシ君が何食連続でカレーを食べたのかを!」
「そうね、お母さんは間違ってたかもしれない。だけど止められなかったの!おばあさんはCECIL McBEEの白シャツの首まわりの汗じみを取ることしか頭になかった!しみとりに取り憑かれた、しみとりババアだったのよ!」
「そんな、おばあさんが染みとりババアだったなんて。あたし青天の霹靂!」
「ははッ、そ、そうね」
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