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「CECIL McBEEだなんて、なんてハイカラなおばあさんなの」
娘は驚きの声をあげます。
「そう、おばあさんは、しみとりババアだったけれど村で一番のおシャレ婆さんとの呼び声が高かった。村一番のイケメンを争った、しげる爺さんやまさき爺さんも、さらにはキヨシお兄さんも、おばあさんには夢中だったって話よ」
「まさか、あの
しげる爺さんまで…」
「本当よ」
「信じられない」
「agehaからセブンティーンまで、流行を先取っていたのがおばさんなの。ただのしみとりだけじゃない。おばあさんには才能があったの」
「わたし、信じたくない。おばあさんにはそんな才能あっちゃだめなの!セブンティーン(17)じゃなくてセブンティー(70)じゃないの」
「だめよ。そんなこと言ったら。年齢なんて関係ないわ。服装は自由なの。憲法には記載されていないけれど、それもまた自由の権利の一つなの」
「だって…じゃあ、おばあさんはしげる爺さんやまさき爺さんと」
「いえ…」
「え、じゃキヨシお兄さんと」
「…違うわ」
「え、ま、まさか」
「カッパの…アツシ君…」
「…キャアアァーっ」
娘は悲鳴を上げた。
続けて言葉を次々に出す。
「うそよ!アツシ君は、
カレーにしか興味ないはず!
私のバレンタインのチョコだって、なんだカレールーじゃないのか、
って、私の目の前で捨てちゃったんだから。そんなアツシ君が、ただしみ取りに夢中のおばあさんに…」
「本当よ。まさに青天の霹靂?よね?あってるわよね?」
「まさか…、アツシ君はおばあさんのためなら、頭の皿のカレーの染みは惜しくはないと言うの?」
母親の発言は軽やかに
流されます。
「うそ…信じられないというか、昔話じゃなくて、思いっきり今の話じゃない。お母さん、ふざけないでよ」
「ふざけてなんかないわ。おばあさんはアタックでシミを取るときに、アツシ君の住みかより下流で洗濯をした。その気遣いにアツシ君はしびれたらしいわ」
「うぅ、アツシ君。覚えておくのよ。この恨みは次回ご来店の際にはらしてやるんだから!バレンタインの私のチィョッコレイトゥの恨み!」
「怒りがみなぎっているわ。その調子よ!そうやって子供はしだいに大きくなっていくの!」
殺気あふれるベッドの上。
妙なテンションで夜は更けていきます。
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