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そして…
あの人を失ってから数年、私は遂に復讐の時を迎える。
どれ程に待っただろうか、幾星霜、心の底に、決してこれからも拭えないであろうヘドロをへばり付かせ。
「時雨…恭介…」
深夜うら寂しい緑地公園。
貯水用の池を背に、一人の男が薄笑いを浮かべている。
時雨恭介、日本最高の魔術師で天草健一郎の師匠でもあった。
しかし、国会議事堂での首相殺しを気に、豹変、こうして追われる身となる。
数々の追撃をかわし、かつての同朋をその手にかけ、血塗られたその身は既に凶者と化していた。
「……誰かと思えば…久しいな?」
手には鮮血に染まり、妖しく光る日本刀、こちらに向けた視線は何処か懐かしむように、そして口元には視線とは不釣り合いな下卑た笑み。
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