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『全く達樹の奴は何でも私のせいにしやがって』
プリプリと怒りながらセイは歩いている。
セイ――名を安倍晴明と言う――は、稀代の大陰陽師として平安の世に名を馳せていた。現在は御堂達樹の体を宿体として存在し、現世の世に蠢く妖魔達を退治する『封じる者』として達樹の良き相棒として活躍している。
セイはどこに行くとも決めずに気の赴くままズンズンと歩いていく。と、前方に何やら不審な気配を感じる。
『……?』
首を傾げながら前方を見据える。
セイより数十メートル離れた場所に何やら負のオーラを纏った男が一人立っていた。その男は真っ直ぐセイの顔を見つめている。
『……誰だ?』
眉を顰めてセイはその男に注意を払いつつ近付いていく。そしてその男と数メートルの近さになるとセイは足を止め男に問いかける。
『私に何か用か?』
その問いに男は口の端を吊り上げて不気味に笑う。
「貴方を安倍晴明様とお見受けするが、よろしいですか?」
低い声で男が逆にセイに問いかけてくる。そのことに少々ムッとしながらもセイはそうだ、と頷く。
『で、私に何か用か?』
再び同じ質問を男に投げかける。
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