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『自分の宿体ぐらい自分で決めるわ!それに……』
一度言葉を区切り、セイは男の顔を真正面から見据える。
『私は今の宿体に何の不満もない』
そう言いきった後、セイはそりゃたまにムカつくこともあるけどな、とモゴモゴと呟く。
男は大袈裟なくらい大きく溜め息を吐く。
「では、無理やりにでも来ていただきます」
『この私に喧嘩を売るというのか?』
「いえ、実力行使です」
同じようなもんじゃないか、とセイは思ったが男が本気で自分に向かってくる気配を感じそれを飲み込む。
『ふむ、本気なんだな』
そう言うとセイは懐から札を一枚取り出す。それに何事か呪文のような言葉をかけ男に向かって投げる。
男はいつの間に持っていたのか手に何か術具のようなものを持ち、セイの投げた札に対峙する。
札は炎を纏い男めがけて一直線に飛んでいく。
男が術具を前に掲げ口の中で呪文を唱えると札が纏っていた炎が弾け飛びその場にひらひらと札が落ちる。
『なかなかやるな』
その様子をセイは少し驚いたように見つめる。
「これでも御堂本家宗主ですから」
『フン』
男の言葉に鼻で笑い、セイは再び懐から札を取り出し呪文を唱える。
するとその札はみるみる人型になっていく。
「式神、ですか」
男が感心するように言う。その言いようにセイはカチンとした。
『御堂本家の人間なんだから式神くらい見たことあるだろう?』
「ええ、まぁ」
男は何か含みを持った笑みを口元に浮かべる。
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