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「式神を扱うのに大変な霊力が伴うことも、重々承知ですよ」
男の言葉にセイは舌打ちをする。
(達樹から離れて大分経つ。まずいな、アイツ、私の霊力が少なくなってきているのに気付いている……)
先ほど説明したようにセイは達樹の体を宿体として現世に存在している。
そのため宿体から長時間離れているという状況が続くと徐々にその霊力は削がれていき、最終的には存在を保つことすら出来なくなってしまうのだ。
そのことに男が気付いていると察したセイは一気に勝負に出た。
式神とは逆の方向に走り、男を挟み込むと懐から札を取り出してそれを男に投げつける。
男はセイから投げられた札を術具で受け止めるとそれを逆から来た式神へと投げる。札は炎を纏ったまま式神に当たり、式神もろとも燃え尽きた。
『くそっ』
式神に大幅に霊力を割いていたセイはその場に膝をつく。
そんなセイのそばに男が近付き、まるで自分より格下の者でも見るような目つきでセイを見下ろす。
「無様ですな、晴明様」
『くっ……!』
霊力の大半を使い果たしたセイは肩で大きく息をついている。
「それでは一緒に来ていただきましょう」
そう言うと男は懐から一枚の札を取り出し呪文を唱える。するとその札はみるみる檻のようなものに姿を変えセイの姿をその中へと閉じ籠める。
『コレは……』
「申し訳ありませんね、大人しく付いてきていただけたのならこんなもの使わなかったのですが」
全く申し訳なさそうには見えない表情で男はセイにそう謝る。
「では、参りましょうか」
男がそう言うとセイを囲っていた檻が宙に浮き、先を歩く男の後ろについて移動する。
セイは肩で息をしながら男に気付かれないように懐に手を入れ、札を一枚取り出すとそれに呪文を唱える。
札はその姿を蝶に変えて檻から外に出て行き、ヒラヒラと達樹達のいる御堂家へと飛んでいく。
『頼んだぞ、達樹……』
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