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村里から遠く離れた山奥に一軒の立派な日本家屋が威風堂々と建っている。
古びてはいるが大きく立派な門が軋みながらその口を開ける。
その門を一人の壮年の男がくぐると迎えに出ていた老人が深々とお辞儀をする。
「おかえりなさいませ、宗主様」
「うむ。『彼』を丁重に地下座敷にお通ししろ」
「はい、かしこまりました」
宗主と呼ばれた男は後ろにある籠のような檻のような物体を指さして言う。
その物体の周りには数十枚の札がそこかしこに張られていて、その中にはぐったりとした一人の少年が入っている。
老人が『彼』を運んで行くのを男は横目で確認するとその足を屋敷の方へと向ける。
「おかえりなさい、お父さん」
屋敷へ向かう男の前方から笑顔で小学生くらいの子供が 駆け寄ってくる。
「恵玖那(えくな)、ただいま」
男は優しい笑みを浮かべて子供を抱き上げる。
「お父さん、『彼』は?」
「ちゃんと連れて帰ってきたよ」
「うわ~い、さすがお父さんだね!」
男の言葉に子供は大袈裟に喜ぶ。その様子を満足そうに男は見つめる。
二人は屋敷の中に入り、廊下を他愛のない話をしながら廊下を歩いていると前から少女と少年が歩いてくる。
その二人は男達の存在に気付くとすっと廊下の端に寄る。
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