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少女達がそんなことを話している時より数日前。
新東京市、某所。
「あ~~~~~~~~~~っっ!」
近所中に響き渡るほどの大きな叫び声が閑静な住宅街の一角にある一軒の家から上がる。
そこは、御堂家。
叫び声の主はこの家の長男、御堂達樹。
この話の主人公である。
「なぁに、達樹。大きな声を出して」
リビングにいた母親が達樹がいるキッチンまで来て声をかける。
当の達樹は冷蔵庫を開けたまま大きく口を開いて呆然と立ち尽くしている。
「ちょっと、冷蔵庫開けっ放しにしないでってあんた何回言ったらわかるの?」
母親は少し怒ったような口調で達樹にそう言いながら冷蔵庫を閉める。
「ない……、俺の……ない……」
「……? 何言ってるの?」
「ない、ないんだよ……俺の、俺の……」
「だから何がないって言うの?」
心ここにあらずの状態でぶつぶつ呟いている達樹に母親はしびれを切らしたように少しきつめの口調で問いかける。
すると達樹はバッと母親の方を見る。その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「ないんだよ! 俺の、大事にとっといたアイスが!」
「はっ?」
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