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「だ~か~ら~、俺が大事にとっといた最後のアイスがないんだよ!」
涙を今にも流さんばかりの達樹の様子に母親は呆れたように溜め息を吐く。
「アイスの一つや二つなくなっただけでそんなこの世の終わりみたいな声を出すんじゃないわよ……」
「アイスの一つや二つって、母さんアレは今年限定のマンゴーカルピス味のバリバリくんなんだよ! もうどこに行っても品切れ状態の貴重品だったんだよ! だから俺は大事にとっておいたのに!」
フルフルと体を震わせながら達樹は母親に力説する。
「そんなこと言われたってお母さんは知らないわよ」
未だ呆れた様子で母親は息子の姿を見つめる。
「誰だ、誰が俺のバリバリくんを……」
座った目をして達樹はブツブツ呟く。
そして、ハッと思いついたように顔を上げると怒りの形相でバタバタと走り去っていく。
「…………全く、誰に似たのかしら……?」
後に残された母親は溜め息を吐くとそう一人ごちる。
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