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『ちょっ、待て、落ち着け、達樹っ』
前後に頭を揺さぶられながらセイは達樹を落ち着かせようと声をかける。
が、そんな声など今の達樹の耳には全く届いていない。
「コレが落ち着いていられるかぁ~! 俺のバリバリくん返せぇ~!」
鬼のような形相になりながら達樹は尚もセイに詰め寄る。そんな達樹を止めようと横から達樹の双子の弟である捺樹(なつき)が声をかける。
「達樹、ちょっと落ち着いて」
「捺樹は黙ってろ!」
「いや、違くって、バリバリくん食べたの……」
「セイに決まってる!」
あくまでもそう決めつけて怒鳴り散らす達樹にセイはカチンとする。
『私は食べていない』
「嘘つけっ、お前以外に誰が食べるって言うんだ!」
『そんなこと知るかっ! とにかく私は食べてなんかいないっ』
だんだんと二人の言い争いがヒートアップしていく。それをおろおろと傍らで捺樹が見ている。
『もう知らんっ、お間の顔なんか見たくもないっ!』
「ソレはこっちのセリフだ、この泥棒がっ」
『出て行くっ、こんな家、出てってやる!』
そう吐き捨てるとセイはリビングのドアを大きな音を立てて閉めると外へと出て行ってしまう。
「ちょっ……、達樹っ、晴明様出て行っちゃったよ!」
捺樹が慌てふためいて達樹にそう言うが、当の達樹はまだ怒りが収まらないのかバリバリとセイの残したポテトチップスを食べている。
「知るか、あんな奴!」
そんな達樹の姿を捺樹は溜め息混じりに見つめる。
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