0人が本棚に入れています
本棚に追加
ふわり、と体が軽くなったような気がした。
(ああ・・・)
悠は、きっともう見ることのない奏子の顔を見た。真っ赤な目からぽろぽろと涙を零し――しかし、それを一生懸命に拭っている。
自分は、もう何もしてあげられないけれど。幸せになって欲しいと、祈るように悠は目を閉じた。
ゆっくりと、意識が遠ざかっていく。
奏子は袋から最後の線香花火を取り出した。
風が少し強くなり、ふうっと蝋燭の炎が消えた。
「あれ・・・?」
火がついていなかったはずの線香花火に、ほんのりと火がともっている。ぱちぱちとオレンジ色の小さな花が咲き、きらきらと砂利の上へと散ってゆく。
「どうして・・・」
線香花火の仄かな光を見つめていた奏子の瞳から、ほたり、と新しい涙がこぼれた。
りりん―――
夜風をうけて、風鈴の音が高く響いた。
最初のコメントを投稿しよう!