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ワインのボトルを半分ほど空けた頃、玄関のチャイムがピンポ~ン♪ と鳴った。
その瞬間、わたしの胸もキュンと高鳴る。
失恋したという情報がまだ脳から伝わっていないらしい心臓が「彼が来たんだ」とでも勘違いしたんだろう。
馬鹿だね、彼はもう二度とこの部屋には来ないよ。
あんなヤツのことなんか、あんたも早く忘れちゃいなさい。
心臓にそう言い聞かせると、わたしは腰を上げた。
酔いが回ってきたのか足元が少しフラつく。
ピンポ~ン♪
玄関までたどり着いたとき、再びチャイムが鳴った。
いったい誰だろう?
携帯電話があって当たり前のご時世にアポなしで訪ねてくるような知り合い、わたしにはいない。
そっとドアスコープから外を覗いてみる。
魚眼レンズ越しに見えたのは、真っ赤な帽子をかぶり真っ赤なコートを着た背の高い──
「──えっ?」
──サンタクロース?
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