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……だったらメルヘンなんだけど、掲げた両手に平たくて四角い箱らしき物を持っていた。
どうやらサンタクロースのコスプレをしたピザの宅配便らしい。
ヒゲまでは付けてない、若い男の子だった。大学生ぐらいだろうか?
でも、わたしはピザなんかオーダーした憶えはない。
「あのぉ、うちは頼んでませんけど?」
ドアを二十センチほど開けて隙間から顔だけを覗かせたわたしは、おめでたいだけでありがたくもない量産型サンタクロースにそう言った。
すると、サンタクロースは驚いたように目を丸くして、
「えっ…あのっ、こちらは玉井さんのお宅ではないんですか?」
「ええ、違います」
「で、でもあのっ……こちらは照が丘一丁目七番地の一、パークサイドハイツ二〇一号──」
ピザの箱に貼られた配達伝票を見ながら、サンタクロースはそこに書かれている住所を読み上げた。
「──ですよね?」
「住所は確かにそうだけど、うちは玉井じゃなくて佐藤です。ちなみに、わたしの知る限りでは隣も上の階も玉井さんじゃないし、下の階の住人は一ヶ月ほど前に転居して今はまだ空室のはず」
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