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尾上くん、本当に連絡をくれるかな?
わたしから連絡したいけど、数年前に携帯を水没で壊してしまった際に電話帳のデータが全滅して、尾上くんの電話番号もメルアドもわからない。
もっとたくさん、いろんなことを話したい。聞きたいこともたくさんある。
第一志望の大学に落ちて滑り止めに進学したものの一年足らずで自主退学したと、いつだったか風の噂で聞いたことがあった。あれからどうしていたんだろう?
部活の帰り道はいつも、わたしばかり喋っていたよね。ときどき尾上くんが何か言いたそうにしても、わざと気がつかない振りをしていたよね、わたし。
わたしに好意を持ってくれていることは感じていた。でも、当時のわたしはそれに応えることができなかった。
進学を口実に家を出たくて仕方がなくて、これといった志もないまま選んだ短大を適当に卒業して、何十社も入社試験を受けてようやく採用された中小企業の商社で毎日、電話の向こうで怒鳴り散らす顧客に頭を下げて、やっとこさできた彼氏には二股をかけられて。
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