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「あ、あのっ……いくら茉莉花先輩でも、女性が眠ってる部屋に勝手に上がり込むなんて僕にはできません。それに、先輩は少し酔っぱらってるでしょう? どれだけ飲んだんですか?」
「ワインを少しだけよ」
「とにかく、これはお返ししますから」
やんわりと合い鍵を突き返されて、わたしはシュンと肩を落とした。
尾上くんの言う通り、わたしは確かに少し酔っぱらっている。それに、ずいぶん馬鹿なことをしている。
クリスマス・イヴに失恋したからって、淋しくて人恋しいからって、何年か振りに偶然の再会をした後輩に部屋の合い鍵を渡して、真夜中でもいいから訪ねてきて欲しいだなんて。
「ごめんね、困らせちゃって」
「茉莉花先輩──」
何か言いたそうな顔の尾上くんだったけど、わたしは昔と同じように気がつかない振りをする。
「じゃあ、さ。起きて待ってるからピザを届けて?」
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