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「──ちょっと待って!」
私はそのまま歩いていこうとする男の子を呼び止めた。
男の子は立ち止まって振り返り、
「はい?」
と、上目遣いで私を見た。
意外にも童顔で拍子抜けしたけれど、私と同じぐらいの年頃だろう。
「なに?」
「携帯電話」
私は足元に散らばった携帯電話の亡骸を指で指し示した。
「あぁ、それ? もう要らないから。壊れてるし」
「壊れてるんじゃなくて、今さっき、君が自分で壊したんでしょう?」
「見てたんだ?」
ええ、見てたともさ。器物破損と不法投棄が行われた瞬間をこの目でしっかりと。
「拾って片付けなさいよ。ゴミはゴミ箱に捨てるのが常識でしょう? 小学生でも知ってるよ、そんなことぐらい」
女にそこまで言われて片付けなかったら男が廃ると思ったのか、男の子は腰を屈めると携帯の残骸を拾い始めた。
放っといて行こうと思ったけれど、行きがかりと言うか成り行きで仕方なく、私も回収を手伝う。
破片には鋭利なものもあり、私は鞄の中から先輩に贈るはずだったマフラーの包みを取り出した。
クリスマスチックな赤と緑のリボンをほどいてラッピングを解体して、包装紙を男の子に差し出す。
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