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私はぺコリと頭を下げると、速足でその場を離れた。
本当は全速力で逃げたかったけど、小さい頃に野良犬から走って逃げたら追いかけてこられて散々な目に遭ったことがあって。
そのときと同じ恐怖が足をすくませたんだろう。
ガードレールの切れ間から道路の反対側に渡ろうとしたら、地面に出ていた街路樹の太い根っこに靴の爪先が引っかかり、私は前のめりにつんのめって転んだ。
その拍子に持っていた鞄が道路に投げ出され、ファスナーを閉めていなかったせいで中身が散乱する。
お財布、携帯電話、CD、コミックス、化粧ポーチ。それから先輩に贈る予定だったマフラー。
車が来ないうちに早く拾わなきゃ──と、私が立ち上がるより早く、さっきの男の子が走ってきて。
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