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「…ところで、何をしに帰ってきたんだ?」
紅玲は何の音沙汰もなく、帰宅した義父に問いただした。
「冷たぁ~い…。せっかく、可愛い娘の顔を見に来たのにぃ…」
冗談でごまかそうとしているのが見え見えで、紅玲はわざと大きくため息を吐いた。
「…見つかったのか?」
多分、見つかってはいない。
紅玲は分かっていたが、冗談で逃がしはしなかった。
紅玲は、義父を見上げる。
孝介は口元だけ笑っていた。
「だいたい見当はついた」
今度は紅玲が、笑った。
「ふーん。なら、取りに行かなくてはな…」
もう、時間がない。
焦りだす気持ちを落ち着かせるように、静かに呟く。
「まぁ、もう少し具体的な位置を特定できたらね」
急ぐ気持ちがあるのは同じだ、と言いたげな薄い笑顔を浮かべて、孝介は肩をすくめてみせた。
窘められた紅玲は、少しムッとした。
「いつ?」
思わず、紅玲は強めな口調で、孝介を睨んでいた。
「だから、そんなに焦る必要はないってこと。僕らはまだ、奴の居場所すら特定できていないんだ」
今度は残念そうに、孝介は肩をすくめた。
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