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「もぅ~紅玲さまったらぁ。こんなにお慕い申しておりますのに」
月夜はそう言うと、ふわりと宙に浮き、紅玲と同じ目線で止まる。
やっぱりいつ見てもお美しい…。
月夜は紅玲を見てため息を零す。
透き通るほどに白い肌、ほんのり紅をひいたかのような口唇、切れ長の瞳、すらりとした鼻、彼女を造る全てが美しかった。
「…そんなことを言いに来たのではないだろう?」
月夜は、紅玲の声で現実に戻された。
「ああ、そうでしたわね…あれ、が現れました」
月夜は、くすくす笑いながら告げる。
先ほどまでとは別人な程、静かで低い声だった。
紅玲はピクリと眉を動かし、そうかと呟く。
「紅玲さまの様な生身の人間では気付かないほど、僅かですが…」
月夜は笑いながら、さらりと言い切る。
そんな月夜を気にもせず、紅玲は口角だけを上げた笑みを零す。
「だから、人間ではないお前にやってもらっているんだ」
月夜は、にっこり微笑む。
「契約ですもの」
「とにかく、また動きがあれば伝えろ…月夜」
紅玲は静かに、しかし力強く告げると、月夜は恭しく頭を垂れる。
「…御意」
月夜は、そのまま音もなく、消えてしまった。
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