月夜の過去

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辺り一帯、見える限り全て闇。 あるのは宙に浮く岩だけ。 椎弥の知っている場所は、こんな雰囲気ではなかった。 無言で、言葉と昔の雰囲気の面影を探していると、月夜がぽつりと呟いた。 「…ここ、私が産まれたとこなの」 何の感情もない声で、遠くを見つめたまま、また、ぽつりと呟く。 「…ここ、私が壊したの」 月夜は振り返り、立ったままの椎弥を見上げて、笑った。 椎弥は、月夜の言葉で思い出した。 狂ったように破壊し、月夜以外は全て屍と化した場所がある。 それが、ここか…。 椎弥ですら、恐怖を感じる程だった。 死体の山がいくつも連なり、その一番高い場所で月夜が、もう誰のものか分からない血液で全身を染めたまま、呆然と立ちすくんでいたのを思い出した。
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