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暢気に考えている俺を他所に、運転手の男は冨美子様に近寄りそっと耳打ちをしている。
俺には、結構距離がありボソッとしか聞こえてはこなかったが、次の瞬間に、
「何ですって!?」
と言う声を聞き、なにか凄く驚くようなことがあったのだろう。
ということは、予想できた。
何があったのだろうと考えていると、ヒールの音が部屋に響いた。
その、音の主を見ると、冨美子様で、ものすごい形相で、こちらへ向かって来た―――
と思ったら横を通り過ぎて、扉を開け、玄関方面へ向かって行った。
しばらくすると、玄関先から、
「おーい、帰ったぞー。冨美子ー。悠紀、いるかー?」
と声が聞こえた。
どうやら玄関には人がいるみたいだ。
俺は誰がいるのだろうと気になり、扉から覗き見た。
その人物を見た悠紀(悠)は、驚いてしまった。
だって、自分の知っている父にそっくりであったのだから・・・・。
え?お、お父様~!?
なんでこんなところに?
だがその父親に似た人物は、
「悠紀ー。冨美子ー。いないのか~?」
と2人の名を呼んだ。
冨美子と呼んだということは、多分身内なのだろうと言うことは理解した。
そして、悠の父親でもないことも。
もしかしたら自分の父親と血の繋がりがあるのかもしれない。
もしかしてお祖父様のお祖父様とか?
でもなぜ自分がここに出てくるのだろう。
『悠紀』
そういえば、お祖父様の名前ではなかったのか。
いや、お祖父様のお父様だっただろうか・・・・。
必死に思い出そうとするが色々なことで頭が一杯になってしまい、混乱状態だ。
もう一度整理をしようと部屋に戻ろうと扉を開けようとすると目眩を起こし、意識が遠退いた。
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