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一瞬運転手の表情が沈んだ気がした。
そこで、運転手は歩き出して、悠紀はそれに続いて歩いた。
1つの大きなドアの前に立ち止まり、ノックをした。
「冨美子様。悠紀様をお連れしました。」
しばらくして、
「入りなさい。」
その返事を聞き、運転手はドアを開けた。
中に入ると、そこに一人の女性がデカデカと座っていた。
パッと見ると、自分の母親に似ていることに気付く。
だが、よくみれば顔立ちも似ていない。
だが周りのオーラは母親のものそのものである。
あれ、お母様の血筋の方?
でも冨美子様なんて名前はなかった気がする。
そして、冨美子様らしき女性は口を開いた。
「悠紀。貴方は一体何を考えているのですか?いくら、予定が入ってないと言っても、外を出歩くなんて・・非常識だわ。」
いい終えるとその女性はため息をついた。
その女性は見るからに怒っていて、なんと言っていいかわからずにいる。
ただ外に出ただけであって、決して悪いことをしたとは思わない。
それにどうして、怒られなければいけないのだ?
「悠紀。聞いているのですか!?」
急に、甲高い声が耳を痛くした。その声の主は、勿論すごい形相で悠紀を睨んでいる。
こ、こえぇ・・・・・。
そんなことを思いながら、一応頷きはするものの、話を聞いている筈がない。
それを見て勘違いをしているのかは解らないが、
「じゃあ、わかったなら自分の部屋に戻りなさい。」
それだけを言われ、戻ろうとしたとき、
バンッ!!と勢いを立ててドアが開いた。
「冨美子様っ!克巳(カツミ)様がっ!」
何事かと思い、ドアの方に視線を移した。
先ほどの運転手だった。
「何ですか?騒々しい。」
それでもやっぱりその女性は怒りが収まらないのか、すこし刺々しい言葉を投げた。
だが悠紀をが気になっていたのはそこではなくて、やっぱり冨美子様だったのか・・・。
と1人で暢気に考えていた。
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