誘惑...

2/2
前へ
/57ページ
次へ
玄関の不快な音が気になり、バージルは布団を出ようとした。 が、寝ぼけたダンテに手首を掴まれ出るに出られない。まるで行くなとでも言いたそうに、唇が微かに動いた。 「困った奴…」 バージルは苦笑いしながらダンテの手を解く。 それから、じっとダンテの寝顔を見つめ、唇にそっと触れた。 「お前が、行くななんて言ったら…俺は何処にも行けなくなるだろうな」 そんな言葉、口にするはずないこと等分かっている。お互いに干渉されるのを好まない性格で、双子故に自分達の領域を侵さない事を合意している。 それでも、甘えられるのは決して悪い気がしない。 それはバージルにとって、ダンテに対してだけ抱く特別な感情である。 無防備な寝顔に近付き、唇が触れた瞬間… オールバックにした前髪がはらりと崩れた。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加