三日月...

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路地裏に冷たい風が吹き抜ける。 ビルの隙間には月の光が届かず、暗闇が広がっていた。その中を静かに歩くバージル。青いコートがバサバサと風に舞い、閻魔刀が奮える。 父の行方を探し気儘に各地を旅しているが、ふと思い立ったように帰る場所がある。それが、今バージルの目の前にある建物。 扉を明け入ると木製のデスクが一つ、ビリヤード台にJUKEBOX、天井にはシーリングファンが回転していた。 「相変わらずだな」 呆れたように呟き、奥の部屋に足を進める。 その部屋は三日月のやわらかい光が降り注ぎ、ベッドには見覚えのある銀髪があった。 コートと上着を脱ぎベッドに入る。 「やっぱり此処が落ち着くな…」 隣にダンテの温もりがある。 どんなに離れても消えない弟の存在。只一つ切り捨てる事ができない絆。
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