第四章 【奇跡】

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 映画を観て、ショッピングして、食事して、帰る。 ・・・ナンジャそりゃ。 ガキのデートじゃあるまいし。 逢う女性は、強姦対象だった私は、どこへやら。 理由はわかってる。 お互い、別の日常があった。 わかっていながら、その事に触れようとしなかった。  ドライブの帰り道。 滝のような雨に、路肩の駐車場に車を停めた。 他愛のない会話のあとの沈黙。切り出したのは、私だった。 「オレさ。今度、結婚するんだよね。」 「おめでとう。いつ?」 「お前は、どうなんだよ。うまくいってんの?」 「まぁネ。結婚するヨ。いつかネ。」 あの日あの時、降りしきる豪雨の車内で、なぜ、彼女を抱き締めなかったのだろう。 とてつもなく巨大な、運命の波動を感じた。 私は、一生涯の後悔を背負った。
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