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一瞬。
「ぐ、はっ」
負けると思っていた。
奴が魔法の剣を使えば、私なんて太刀打ち出来ないはず、だった。
「……何故」
ヴェルドは剣を捨てていた。
剣を捨て、自ら進んで私に切り裂かれていたんだ。
「人間なんて、人間如きが…俺を友だ、などと……」
ヴェルドは笑った。
それは、さっきまでの悪意に満ちた笑みじゃなく、仲間として過ごしたあの日々の…優しい笑顔だった。
「くそっ、死ぬんじゃない。死ぬんじゃない!」
「魔法の剣、これからはしっかり守れよ…な……」
ゆっくりと灰に変わっていくヴェルドの体。
魔法の剣。
これのせいで、沢山の人が死んだ。
これのせいで、大切な友を失った。
こんな物のために…こんな、物の。
「……もう二度と、悲劇は繰り返させない」
破壊してしまおうと思って振り上げた剣を、私は静かに下ろした。
守る、と友に誓ったんだ。
何があろうと、私はこの剣と約束を……守り続ける。
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