序章

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女が見つめている眼下には、冷たいコンクリートが敷き詰められている。 8月○日、午前6時過ぎ、連日熱帯夜が続いている割には、外はまだ涼しく感じた。 女は秋物の洋服を身にまとって、ミディアムロングの髪の毛が心地いい風を感じてひらひらとなびいていた。 一歩前に踏み出せば、そこはもう何もない空間。 女は顔を正面に向け、静かに瞼を閉じた。 生唾を、"ゴクン"、と一回飲んで、ゆっくりと前に倒れていった。  
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