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白の対極として、松帆は黒。
平均の男子高校生よりも少し背の高い体躯が纏うものは、大量生産の黒い学生服。
東洋人には一般的な黒の髪と目は、そこそこ造形の整った無難な青年を完成させていた。
この上なく平凡な、数十億の中のひとつの人間。
ソレは、例えるならば闇。
ヒトの世そのもの、そしてヒトそのもの、
その存在は常に隣り合う、特殊性の無い闇の象徴。
どこまでも非凡な“陽”と、どこまでも平凡な“闇”の二つが同時に存在する、ある意味で奇妙な一室。
だが、間もなくもう一つの“存在”が来訪する事を、松帆は知っている。
―――来た。
松帆の直感が反応した。
ポケットに収まる右手が中の“武器”を握り、思考からは雑念を払われ、神経は極限まで研ぎすまされる。
瞬時に行われたそれは、ほぼ反射的な行動。
物心付く前から叩き込まれ、16年間幾度となく繰り返してきた動作は、もはや習慣に近い。
数瞬の静寂を置いて、
ソレは姿を現した。
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