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「――違う……違うの……」
かすれた声で、うわ言のように繰り返す。これでは駄目なのだ、と首を振った。
「抱き締めて欲しいの……寂しいんだ」
性愛を求めているのではないのだ、と。
「――ハル」
遼という俺の名を、『ハル』と呼ぶのは祐一だけだ。俺も、すっかり『ハル』という名に慣れてしまっていた。だからこそ、久し振りに呼ばれた『リョウ』という名前が特別なものに思えてならなかった。
「遼、愛してる……愛してるんだ」
自分に言い聞かせるように、真剣な顔をする。離れたくない、と言っているような気がした。愛の言葉を囁かれる度に、俺の不信は募っていった。
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