一日職業体験

4/24
前へ
/160ページ
次へ
一瞬にして海の底のような沈黙が辺りを制した 目を見開く教師 動けぬ男子生徒 手を口にあて、固まる女子生徒 そして顔面をひりひりさせながら、うつぶせで倒れたままのアルゴル この重い沈黙を破ったのは、他でもない、アルゴル本人だった 「ったー。痛い。」 ふらふらと立ち上がり、顔を抑える アルゴルの心の中で何かが抜け落ちていた それを拍子に男子生徒の笑い声が響く 続いて何を感じ取ったのか、女子生徒のテンションの上がった囁き声 最後に教師のため息だった 「おい、アル、大丈夫かよ!?」 「確かにお前ぶきっちょだけどさ、まさか剣ひとつ使えないとは思わなかったぜ!」 「ア、アル、可愛い・・・。」 アルゴルは自分の周りに笑いながら集まる男子の笑い声や、かすかに聞こえる女子の囁きを、どこか遠いところで聞いていた 静かに、視線を男性教師のもとへ向ける 片手で顔を抑えていた教師が顔を上げ、真っ青な表情で自分を見つめるアルゴルと目があった すると男性教師は顔を抑えていた方の手で、親指をたてアルゴルに見せた 「補習決定!!」 刹那、アルゴルの時間は止まった 「い、嫌だーーーっ!!」
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

889人が本棚に入れています
本棚に追加