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その女性はアルゴルが真横までくるとやっと存在に気付いた
しかし顔をあげることはなく、視線を持っている分厚い参考書に落としたままだった
「あ、ありがと。そこに置いといてくれる?」
女性はそっけなくテーブルの微妙に空いているノートやらの隙間を指差した
アルメリアはキッチンのドアの影から不安げにその様子を見ていた
「・・お姉さん、あの・・・。」
アルゴルはついさっきまでアルメリアと話していたときのやる気ないぼーっとした声とは全く違う声色で話しかける
少し子供っぽい甘えるような声だった
そのあまりの違いにアルメリアが扉の隙間からずりだしそうになったほどだ
女性はおもむろに顔をあげてアルゴルの顔を初めて見る
そして息をのんだ
彼女の目の前にいる少年はまるで女の子のようなきれいな顔で自分を見つめていた
「・・実は俺今日初めての仕事なんです。それで、その・・・。失敗・・しちゃって。」
口ごもりながらまずコーヒーを置き、そしてオムレツを出す
女性がえっと言う表情になる
「ごめんなさいっ!こんなのしかできなかったんです。」
頭を下げて謝るアルゴル
困ったような顔色でアルゴルを見る女性
“な、何やってんのよ、あのバカ!お客さん困らせてどーすんのよ!!”
冷や汗だらけの真っ青な顔で、耐え切れなくなったアルメリアはわなわなしながら出てきた
しかしアルゴルの背後しか見えないアルメリアの見えぬところで不思議なことが起こり始めていた
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