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アルメリアは持っていた飲み物を客に出してしまうとキッチンに戻った
キッチンに戻るとアルゴルが皿を不器用ながらも必死にスポンジを使って洗っていた
「あんたねぇ・・・。」
アルメリアがアルゴルに言えたのはそれだけだった
言葉が出てこないというのもあったが、まずアルゴルが話し出したのだ
「・・ねえ、あの壁にかかってるのってさ・・・。」
流しの前には小さめの窓がついていて店の中が見える
アルゴルは皿を洗う手を休めぬまま視線だけ動かしてあごでそのモノをさした
「・・?・・・ああ、あれね。」
アルメリアの表情が優しく嬉しそうにほころんだ
アルメリアの見つめる先には小綺麗な店内に異質な存在感を放つ何とも大きな大剣があった
大剣は木で出来たつっぱりに支えられ、その大きく重たげな刃は紐で天井からぶら下げられていた
アルメリアが手を後ろで組み、楽しそうに説明しだす
「あれね、私のひいじいちゃんが昔この辺りであった大きな戦のときに使ったんだって。」
「・・ふーん・・・。」
昔、まだ都市や国間の繋がりが不安定だったころ、土地や資源を巡って幾度も戦があったという
今となっては国や自立都市の間で協定が結ばれ、戦が起こるのは極めて稀なこととなった
アルメリアの曾祖父はその時代を生きた兵士だったのだろう
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