8323人が本棚に入れています
本棚に追加
/579ページ
「ううん、祐司がそれだけ私の事を想ってくれてたってことだから謝らないで……」
今ここで祐司に謝られると、まるで人を好きになることが悪い事のように思える。
確かに人としての最低限の常識や限度はあるとは思うが、人を好きになることは決して悪い事ではない---むしろ良い事だと思う。
「うん、分かった。でも、その代わり奈都も俺との事で自分を責めないで。こんな形で終わってしまったけど、奈都を好きになったことは後悔していないから」
最後の最後まで優しい祐司。
絶対に祐司は被害者で悪くはないのに私の事を気遣ってくれている。
いくら祐司が言ってくれてても自分の中の罪悪感は簡単に消えるはずもないし、忘れてはいけない事だと思うが、今は……
今だけは祐司の優しさに甘えようって思った。
「ありがとう」
迷いに迷ったが祐司の気持ちも考え笑顔でお礼の言葉を口にした。
私の言葉に祐司も肩の荷が下りたようにホッとした顔を見せ、椅子の背に身体を投げ出すように預ける。
途中、想像もしていなかったくらいの"泥沼"状態だっただけに、まさかこんな穏やかに祐司と話すことができるとは思ってもいなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!