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始まりの記憶
『お前を見てると麦畑を思い出すよ』
もう顔も思い出せない、かつての仲間の言葉。
あの頃は戦場が世界のすべてで、視界に入るのは廃墟や荒野だけだったから麦畑なんて見たことなかった。
だから、生まれて初めて見た麦畑に感動したのを今でも鮮明に覚えている。
太陽の光を浴びてキラキラ輝く黄金が、風に揺らめいて波をうつ。
どこまでも広がる金色の大地と青く澄んだ空は、まさに自由そのものだった。
感動すると涙が零れるということも、その時初めて知った。
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