STAGE1 【EVERYDAY LIFE】

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「寝てた?」 「ぐっすり」 俺と妹は、ほとんど垂直に近い階段を慣れた足取りで降りていった。 居間からお笑い番組と推測されるやかましい音が聞こえてくる。 階段を降りきって2歩で居間に到着だ。 冷蔵庫、流し、食器棚、ガタガタの4つ足テーブル、イス4脚が無理やり詰められた部屋、それが我が家の居間だ。 最近開発された感じの薄型テレビが、壁にかかっていた。 うちの居間ほど薄型テレビが似合う空間は、あまりないだろう。 スペース節約のプロフェッショナル、薄型テレビ、あっぱれ。 内容はやはりお笑い番組。 さっさとお笑いブームなんて過ぎてしまえばいいものを、懲りずにまだやっている。 実際、今のエンタの神様なんて見れたもんじゃない。 内容がお粗末過ぎた。 居間には親父が一人、爆笑レッドカーペットを見て爆笑していた。 テーブルの上には、親父が切ったと推測される、いびつな形のスイカが白い皿に無造作に置かれていた。 「そんなに面白い? それ」 俺はいつもの定位置に座りながら言った。 ちょうどテレビの正面。 「世の中笑えないことだらけだからなぁ。こういう時にたくさん笑っておくのさ。冷たいうちに食べろ」 悲しい親父だ。 確かに世の中笑えないことだらけだ。 「親父がスイカなんて、珍しいね」 「お隣さんがくれたんだ」 ふーん、と言って俺はスイカを頬張った。 蒸し暑い夜だ。 居間にエアコンは無く、扇風機は置くスペースがない。 家族の団欒の場となるべき空間が、夏には一番暑く、冬には一番寒かった。 開け放たれた窓から、心地よい風がふわっと吹いてきた。 その風、実は天国から吹いてきたんだよ?と言われたら簡単に納得できる、そんな風だった。 「舞、明日の準備はできてるのか?」 親父が始めてスイカに手を伸ばしながら言った。 「それ聞くの3回目だよ」 舞は冷たく答えた。 「できてるってことか。んで純也、本当に一人でこれるのか?」 「俺はちゃんと終業式に出るよ。大丈夫。飛行機くらい一人で乗れる」 俺は2つ目のスイカに手を伸ばす。
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