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「友達を泊めるなとは言わないが、あまりハメを外しすぎるなよ」
わかってる、と俺は頷いた。
「兄貴、うちの部屋に友達いれたら殺すからね」
わかってる、と俺は頷いた。
「夏だね、しかし」
親父がポツリと呟いた。
翌朝、やかましい目覚ましの音で目を覚ます。
俺はしばらく自分の部屋の天井を眺めていた。
蜘蛛がいる。
昨日のあいつか。
Good morning!
朝の蜘蛛はいいと言うじゃないか。
「うわ」
机の上の携帯が突然震えだした。
こんな小さな振動に驚くなんて、何なんだ一体。
俺は体を起こして、携帯を取った。
着信:舞
「あんだよ」
俺は不機嫌を隠さず電話に出る。
『あ、兄貴! うちの部屋のエアコン電源いれっぱかも。ついてたら消しといて。じゃね!』
ツーツーと虚しい音が向こうから聞こえてくる。
結局、会話のキャッチボールは一回しかなされずに終わったわけだ。
俺がやる気の無いスローボール、舞は歪なカーブを返球。
バッター振り逃げ。
今頃、親父も舞も成田空港にいるだろう。
夏休みが始まるのを待ちきれずに海外旅行なんて、はしゃぎすぎだ。
かく言う俺は大人しく終業式に出てから、飛行機に乗る。
俺は欠伸をして、伸びをしてしばらくぼーっとしてから部屋を出た。
エアコンは付けっぱなしだった。
舞の部屋に入らずとも、エアコン独特の音が漏れてきている。
俺はため息を付き部屋に入る。
「寒っ」
部屋の中は素晴らしいほど冷えていた。
扉の脇の棚に置いてあったリモコンを見たら、なんと22℃。
うちの妹は地球温暖化にかなり貢献しています。
一階に降りて、居間の机の上に用意されていた朝食を食べる。
なんかよく分からないがサンドイッチのつもりらしい。
汚い走り書きのメモが皿の脇に置いてあった。
『良かったら朝飯にサンドイッチでも食え。行ってくる。日本時間の19時くらいに電話をいれる』
めちゃくちゃ焦げたトーストの間にハムと、一昨日の夕飯に出たポテトサラダが詰め込まれている。
ほのかにバターの味も。
こりゃいい、トーストとサンドイッチを2つ同時に楽しめる訳だ。
俺は一口かじってそれをゴミ箱に投げた。
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