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家に着き、彼女の写真や彼女の音、彼女の匂いに囲まれる。
どの彼女も可愛く愛しく感じる。
しかし、今日近くで感じたものがない事に僕は気づく。
ベッドに仰向けになり、手を宙にあおぐ。
想いだすだけで、僕の体は高揚感で熱くなる。
想うだけで恋しく思い。
想うだけでその『ないもの』が何かハッキリと実感してしまう。
そしてそれより先を求めてしまう事を僕は知っている。
「僕は彼女を汚したいわけじゃない」
嗚咽まじりに涙と願望を吐きつける。
それでも考えてしまうんだ。
彼女の甘さや、彼女のやわらかさ、彼女のほんのり色づいた甘そうな頬。
むせかえるような甘ったるい声の出る、艶やかな唇。
愛しい熱。
その身体と肌を重ねたらどんなに心地よいのだろう。
彼女の蜂蜜のような唇はどれだけ甘いのだろう。
彼女と一つになれたとき僕はどれほどの幸福感に包まれるのだろう。
僕の幸せを与えられるのは彼女だけ。
「だけど我慢しなきゃ。彼女の事を本当に愛しているんだから」
彼女と重ねた手のひらに唇を重ねる。
彼女と再び、愛しい時間を過ごせる事を願って。
僕が彼女を大切に愛せるように。
愛しいからこそ壊したくないんだ。
彼女に用意した拘束具や鎖を握り締めながら眠りにつく。
夢の彼女は僕に従順で僕なしでは生きられない存在になっていた。
願望だけど、願望ではない。
夢は欲望の現れ。
End
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