盲目患い

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『あなたのピアノはとても柔らかで優しくて耳に心地良いの。 いつも回りの女の子がいて気付かなかったけど、あなたのピアノは私の耳にも届いているよ』 演奏が終わったあと、彼女が携帯を見せる。 俺は今まで彼女に一緒に居て欲しいとは伝えていたが、ピアノを聴いてもらう本当の理由を話していなかった。 自然に涙が零れ、彼女を勢いよく抱き締めた。 初めて自分の演奏は人に届いたのだと実感した。 嬉しい気持ちもあったが、何より愛しさが胸を占めた。 「……ありがとう、君がいてくれたから俺は本当の演奏をする事が出来た。やっと俺の音が人と繋がれたんだ」 彼女と視線を合わすと、彼女も俺と同じように泣いていた。 彼女を本当に愛しいと思った。 、
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